【ジョウトオープン】受けループ&攻めループ
PGLにて5/27〜29の間に開かれた、限定ルールのシングル63大会「ジョウトオープン」にて使用したパーティを紹介します。
【概要】
今回のルール発表を聞いた瞬間「メガシンカがない=ポケモンのパワーが下がる」ため、受けループ系統が強いと考えた。実はメジャーな受けループを構成するポケモンのほとんどが今回のルールで使用可能であるため、相手側のパワーは落ちているがこちらはほぼ理想的なパーティを構築出来るという点で、構築段階から有利であるはずだ。
まず採用を決めたのはバンギラス+エアームド+ラッキーの3匹。バンギムドーの組み合わせ自体がかなり広範囲に対応出来るが、このままでは今回のルールでもう1つのトップメタとなりうるニョロトノ+キングドラの雨パーティに対して薄くなってしまうので、この2匹を完全にストップ出来るラッキーが3匹目に自然と入ってきた。
物理受けがエアームドしかいないと役割集中的な動きをされてエアームドが過労死した場合に相手の物理エースが止まらない。特に攻め系統のパーティで採用されることが多いカイリュー+ハッサム+マリルリの組み合わせは、いずれも積み技からエアームドに大きな負担を掛けて突破を狙ってくるため、これらの積み技に対するメタとして特性〔てんねん〕を持つヌオーを採用。これにより受けループとしての安定感が増す。
残りは穴埋めで、まずはここまでで非常に重くなっており使用率も高そうなスイクン対策としてサンダーを採用。ヘラクロスやカイリキー等の格闘も一貫していたため、ライコウではなく飛行タイプを持つサンダーの採用となった。
最後はここまでで処理ルートがきちんと確立されていない「ちいさくなる」ピクシーや「たくわえる」ヌオー、「めいそう」スイクン等の要塞系ポケモンを崩す枠として「ほろびのうた」ゲンガーを採用。補完枠であり選出率は低いが、格闘や地面無効により選出画面にいるだけで相手の「インファイト」「ばくれつパンチ」等を少しでも躊躇わせることが出来るのは重要である。
こうして6匹が決まり、試運転で負け試合やきつい相手を見つける度に微調整を加えて、以下の最終形となった。
【個別解説】
■バンギラス@こだわりハチマキ
意地っ張り 185-188-131-**-140-99
ストーンエッジ かみくだく おいうち ばかぢから
・C182ゲンガーのきあいだま 15/16耐え
・C183ライコウの『こだわりメガネ』+「はどうだん」 15/16耐え
・通常「おいうち」+砂ダメージ1回で167-81ゲンガー確定
本ルールで間違いなく最強クラスのポケモン。同様にトップメタであるライコウに強いのが偉い。単純に高い種族値により広範囲と撃ち合いが可能で、主に特殊アタッカーを相手取る役目を担う。ラッキーと比較すると、相手の処理速度が速いことから起点にされにくいのが特長となる。
構築当初は特殊受けとしての役割を安定させる『たべのこし』等の防御寄りなアイテムを持たせていたが、調整中に相手のラッキー、ハピナス、カビゴンへの打点がパーティを通してほとんどないのが気になり、受けループミラーでも相手を崩す糸口となる『こだわりハチマキ』型に変更したところ飛躍的に強くなった。
配分はゲンガー入りに対してラッキーが出しにくい場合まで想定してタイマンで勝てるように特殊耐久重視。C182「きあいだま」耐えまで振ることで全てのライコウやエーフィに対しても安心して動けるようになる。
次にすばやさだが、パーティ単位で重い「ぜったいれいど」スイクン抜きはマストとし、多少すばやさに振ったエアームドやハッサム等を抜いておくと便利だと考え、なるべくすばやさを高くした。多発するミラーでも本番中1回しか負けていなかったので、多めに振って正解だった。
こうげきは最大だとエアームドを高乱数2発で落とせるが、特殊耐久とすばやさを重視して残りを振る程度になった。これでも基本的な役割対象は1発で仕留められる上に、急所に当たりやすい技なのでエアームドを2発で倒せるチャンスはそれなりにあると踏んだ。
実際にはゲンガーに「きあいだま」を撃たれる場面は本番では1回もなく、エアームドに「ストーンエッジ」を連打する場面が多かった。しかし「きあいだま」を撃たれずとも『こだわりメガネ』ライコウの「ボルトチェンジ」2発+「10まんボルト」を耐えて勝てた試合もあったり、特殊耐久には助けられた。
技構成はどれも必要な技で、格闘技が「ばかぢから」なのは「けたぐり」ではラッキー等が処理出来ないから。また地味に「おいうち」が重要で、『こだわりメガネ』と判明したライコウやサンダーの「ボルトチェンジ」際に相手を機能停止に追い込んだり、サイクル戦で相手のラッキー等をピンポイントで狩って後ろのサンダーを通したり等、用途が多かった。
■エアームド@ゴツゴツメット 〔がんじょう〕
腕白 172-100-211-**-91-90
ドリルくちばし のろい どくどく はねやすめ
バンギラスの苦手な地面や鋼をローリスクで受けることが出来る、良き相方。等倍で通ってしまう格闘に対しても高い防御と飛行技により殴り勝てることが多い。強力な物理アタッカーであるカイリューやハッサムに対して『こだわりハチマキ』でも「りゅうのまい」「つるぎのまい」でも後出しが安定するのが偉い。
攻撃技が「ドリルくちばし」なのは威力を重視しつつ反動は受けたくないため。「つばめがえし」の必中効果も捨てがたいが、「ちいさくなる」ピクシーには特性〔てんねん〕の場合殴り勝てず(〔マジックガード〕でないなら「どくどく」で崩せるかに見えるが、「ねむる」があった瞬間負けなのであまり対策としては安定しない)、「ちいさくなる」スターミーやラッキー等は調整・本番含めて一度も遭遇しなかったため回避戦法の対策は後述のゲンガーに丸投げした。実際出した試合の全てで必中効果は生きずに威力が高いお陰で相手に蓄積を多く与えられたので、これで正解だと思っている。「どくどく」は相手の特殊アタッカーの後出しに有効で、また対面からポリゴン2や「ねむる」のないヌオーを崩す手段としても重宝した。
配分は防御特化。この配分+「のろい」によって、カイリューやオーダイルの「りゅうのまい」に後出ししても「のろい」から殴り勝てる。当初はこの枠は「ふきとばし」として積み技対策としていたが、マリルリの「はらだいこ」以外の積み技には「のろい」で対抗出来るため、相手の物理寄りの選出を1匹で詰ませて全抜きが狙える他、「ちょうはつ」のないグライガーを含んだ受けループミラーにおいて突破口を開くために「のろい」採用に至った。
また、この技は対地面タイプアタッカーで最も威力を発揮する。通常であればガラガラやイノムー、ゴローニャ、すばやさに振っていないドンファン等を相手にする際にサブウェポンでHPを削られた場合、先手「はねやすめ」で飛行タイプが消えると後攻「じしん」で弱点を突かれるためあまり有利に試合運びが出来ない。しかしながら「のろい」で敢えてすばやさを下げることで「はねやすめ」を後攻で使えるようになり、地面技を被弾するのを防ぎつつ殴り合いに持ち込める。
持ち物は交代で繰り出すだけで相手に蓄積を与え「とんぼがえり」等にもリスクを持たせられる『ゴツゴツメット』とした。『きれいなぬけがら』でないためレアコイルを見ると選出を渋る羽目になるが、レアコイルの数より圧倒的に『ゴツゴツメット』が有効な物理ポケモンの数の方が多いためこの選択。
特性を〔するどいめ〕とすることで「ドリルくちばし」を採用しながら「ちいさくなる」ポケモンに強く出られる選択肢もあったが、一撃必殺技持ちの方が確実に数が多いと考えられたため〔がんじょう〕とした。「ぜったいれいど」スイクンにはタイマンで勝てるわけではないが、「ぜったいれいど」を無効化して「ねっとう」を誘発させ、サンダー等の後出しを安定させる立ち回りが出来る点で役立った。また数はそこまで多くないが、ラプラスを安定して任せられるのは大きかった。
■ラッキー@しんかのきせき 〔しぜんかいふく〕
図太い 326-**-62-56-156-71
ちきゅうなげ サイコキネシス でんじは タマゴうみ
・「サイコキネシス」で167-96ゲンガーの「みがわり」確定破壊
バンギラス+エアームドの組み合わせが苦手とする雨パへの絶対的防御策として採用。圧倒的な特殊耐久により、ニョロトノ+キングドラにごり押しで負けることを防げる。防御も高く、物理グドラだった場合でも難なくストップ出来るため対雨パは相手の型に依らず全勝だった。
ニドキングやニドクイン、フーディン、スターミー等のバンギラスや他のポケモンで相手にしにくい特殊アタッカー入りに対して主に出して行く。バンギラスは回復手段を持たないため「どくどく」「みがわり」ライコウや『こだわりメガネ』でのごり押しに弱いが、ラッキーは〔しぜんかいふく〕を絡めれば「どくどく」「みがわり」ライコウに対しても一方的に狩られることなく負担をかけて行けるので特殊受けとしての安定感はさすがの一言。ゲンガーも「おにび」「きあいだま」を考えるとバンギラスでは安定して相手に出来ないため、ラッキーで安全に相手したい。
技構成は一般的な3つに加えて、「みがわり」や「ちょうはつ」持ちゲンガーを意識した「サイコキネシス」を採用。せっかくゲンガーが受けられるのに何も出来ないどころか起点にされるとパーティが崩壊するため、「ステルスロック」を切って泣く泣く採用した。補助技が「でんじは」なのはエアームドが「でんじは」を覚えない関係上こちらに「どくどく」を入れると相手のすばやさを奪う手段が少なくなり「りゅうのまい」「からをやぶる」等が怖かったため。実際物理耐久が高いのを利用して、バンギラスやキングドラ、カイリューの全抜きを阻止する立ち回りも視野に入れることが出来るため有用だった。
配分は最初は防御特化だったが、『こだわりメガネ』ニョロトノにゴリ押されて負けたのをきっかけにとくぼうにも配分するようにした。
■ヌオー@オボンのみ 〔てんねん〕
図太い 202-**-150-85-86-55
ねっとう たくわえる じこさいせい ねむる
物理受けがエアームドしかいない場合、ハッサムカイリューマリルリ等の積み物理エースを複数採用したパーティに「はたきおとす」や「はらだいこ」でエアームドが過労死させられ物理が一貫してしまう。そこで、特性〔てんねん〕により積み技からの強引な突破に対して圧倒的に強く出られるヌオーを採用した。
同じ特性を持つピクシーとはタイプの面で明確な差があり、ドラゴンを無効にする耐性よりも電気を無効に出来る方が、「ボルトチェンジ」という技の存在と厄介さを考えると有用である。またハッサムを相手に出来るかどうかでも大きな差が生まれる。このルールでは優秀な積みポケモンの数は少ないため、積み系統のパーティのハッサム採用率はかなり高くなる。そのようなパーティに対して臆せず出せるようにするためには、ヌオーである必要があった。
また、本来の役割は物理受けでありながら「めざめるパワー(草)」を持たない電気タイプ全般を見ることも出来、意外と複数の役割を同時に遂行することが可能なのもポイント。特殊アタッカーが電気タイプくらいしかおらず、そのポケモンに「めざめるパワー(草)」がないようなパーティはこいつ1匹で崩壊する。
技構成は物理を起点に裏の特殊まで見られるようになる「たくわえる」をまず採用。優秀なタイプと特性により、低種族値ながら1匹で相手を詰ませられる可能性があるため、勝ち筋の1つとしてカウント出来る。また、併せて汎用性のある回復技である「じこさいせい」までは確定。加えて「どくどく」でヌオーを機能停止に追い込まれることが多いので「ねむる」も採用。数の多い「どくどく」「みがわり」ライコウにも恐れずに出していける。最後の攻撃技はやけどの追加効果が優秀で、物理アタッカー相手にも耐久ポケモンミラーでも有効な「ねっとう」を採用。
持ち物は『たべのこし』や『カゴのみ』も余っているが、物理受けとして通常の運用を考えた際に足りない数値を一時的に補える『オボンのみ』が最もしっくり来た。むしろこの持ち物がないとほとんどの物理に後出しすら怪しいため必須級。
■サンダー@こだわりメガネ 〔プレッシャー〕
控えめ 166-**-119-179-111-152
10まんボルト ボルトチェンジ エアカッター ねっぷう
・A200カイリキーの「ストーンエッジ」+「バレットパンチ」確定耐え
・207-136スイクンを『こだわりメガネ』+「10まんボルト」で13/16で1発
・166-106カイリキーを『こだわりメガネ』+「エアカッター」で確定1発
・すばやさ最速ギャラドス抜き
採用順はかなり後ろの方だが、実際の試合では選出率50%以上で活躍した真のエース。スイクンを一撃で倒せるポケモンがいないため『こだわりメガネ』を持たせて処理速度を速めた。受けポケモンに見えなくもないため、相手の選出や立ち回りミスを誘えるのもグッド。主に先発で繰り出すことが多く、「ボルトチェンジ」で削りながら後続の有利なポケモンで受けていくのが単純ながら強い。決定力が低い受けループにおいて相手を崩す要。特に「エアカッター」が優秀で、第五世代の『こだわりメガネ』+「めざめるパワー(飛行)」サンダーを思い出す一貫性の強さ。ヘラクロスやフシギバナ入りに積極的に出して飛行技を一貫させてダメージを稼いだ。また「ねっぷう」もサブウェポンとして有用で、無振りライコウを2発で倒せたり電気の通りが悪いレアコイルに抜群が取れる。
配分はカイリキーにタイマンで勝てるように調整。カイリキー入りの多くはこのパーティを見たら先発で出してくる&サンダーには退かずに突っ張ってくるため何匹も葬った。ヘラクロスもタイプ相性をご存じでないのか、たまに退かずに突っ張って狩られてくれる。すばやさはヘラクロスを意識する以上最速ヘラクロス(150)は抜いておきたく、更にすぐ上にいるギャラドス(151)も考えると無補正最速の152となった。
隠れ特性〔せいでんき〕が解禁済だが、この型の場合特性は〔プレッシャー〕一択。先発対面で特性の発動順を見ることで、相手のサンダーやバンギラス、ニョロトノのすばやさを判別出来るのは重要。先に動けると分かったら「ボルトチェンジ」が安定して撃てるし、相手が速くてダメージを負いたくなければ裏の受けポケモンに退く、といった判断の手助けとなる。
■ゲンガー@くろいヘドロ
臆病 145-**-81-172-96-178
シャドーボール みがわり ほろびのうた みちづれ
・HP16n+1
・「みがわり」がC133フシギバナの「ギガドレイン」確定耐え
完全なピンポイントメタ枠。パーティの苦手な耐久上昇系積み技+「ねむる」持ちの要塞ポケモンを崩すためだけに採用された。また、ドーブル+エーフィのバトンタッチパーティに対しても無対策だと勝てないため、1枠割いてでもそれらの対策ポケモンを入れておきたかった。
「ほろびのうた」+「くろいまなざし」にしないと実際は相手に逃げられてしまうのだが、積み技を使われた状態から一度退かせてリセット出来れば充分と考えて「くろいまなざし」の採用は見送った。うまく滅びのカウントが切れる前にバンギラスに交代し、「おいうち」を決めることで狩りたい対象を狩ることも可能。何度もメガゲンガーが使いたくなったが、実際に立ち回りだけでエーフィをアンカーとしたバトンパには勝てたので問題なかった。
「みがわり」はフシギバナの「ねむりごな」やドーブルの「キノコのほうし」を意識して入れたが、「ほろびのうた」のカウント稼ぎに使えたり、連打して攻撃技を誘発してから「みちづれ」を決めたりと幅広い使い方が出来、強かった。
【戦績】
●ジョウトオープン 32勝10敗3エラー(最高1800超え 最終1758 104/24053位)
開幕14連勝でストレートでレート1700を突破する等序盤は好調であったが、中〜後半に運のなさを連発して1700後半を低迷。1800突破後、残り5試合くらいの状態で勝ち試合が回線エラーで負け扱いとなったのがトドメとなり上位は狙えなくなり、更に最後に2連敗し大幅にレートを落として終了。無念。
負けの内訳としては要所での技外しと相手のワンチャンス「ぜったいれいど」がヒットしてしまった試合が半数以上。42試合通して自分のバンギラスの「ストーンエッジ」の命中率よりもスイクンから食らった「ぜったいれいど」の方が命中率が高かった(6回撃たれて5回ヒット)という残念っぷり。もう少し運がマシならもっと早い段階でボーダーに届いて撤退出来たと思うが、限られた試合数の中で結果を出すには多少なりとも運が必要なのは分かっていたので仕方なし。「ぜったいれいど」に対しては〔がんじょう〕エアームドを合せてなるべく被弾回数を抑えていたつもりだったが、それでも理論値を遥かに上回る命中率だったので負けがかさんでしまった。また、パーティを通して命中の低い技はほぼ採用していないが、最もパーティ内で命中の低い「ストーンエッジ」の使用回数が想定以上に多かったのは反省。『こだわりハチマキ』バンギラス自体は強かったが、「ストーンエッジ」でエアームド入り等を崩すという考え方は改めた方が安定感は上がるだろう。
上記のように本戦では思うような結果には繋がらなかったにしろ、試運転・本番通して勝率75%くらいはキープ出来ているため、パーティとしてはかなり仕上がっていると自負している。
使えるポケモンが少ないお陰でほぼ全てのパーティに対してある程度納得のいく回答を用意出来ており、どんなパーティ相手にも見せ合い時点で「構築上無理」と思うことがないのは、対戦をしていて楽しかった。これは現在のシングルレート等では考えられない(使えるポケモンが多過ぎると対策が全く追いつかない)ことであり、たまにはこのような限定ルールも楽しいと感じるのも普段では味わえないような「完璧なパーティを追求する醍醐味」を味わいやすいからだと思った。 今後もこのようなルールの大会が開かれれば積極的に参加を検討したい。(期間中対戦時間が取れそうになくても、考察だけしてパーティ案投げるとかでも楽しめそう)
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ここまで読んで下さりありがとうございました。長くなりましたが今回はこの辺で。